運航
2017/07/31

生きた知識になっているか(プロを目指す方へ)

運航本部
JGAS AVIATION BLOG

連日の猛暑で体調を崩したりしていませんか?ちょっと夏バテ気味のJGAS鹿児島フライトトレーニングセンター 運航本部長の山口です。今日も当ブログにお付き合いいただき、ありがとうございます。

良く勉強しているが…

先日、航空局の元同僚(元試験官)と雑談していて、最近の若い訓練生について「真面目に良く勉強しているし知識もあるけど、生きた知識になっていないよね」という話が出ました。実は私もそのような感触を持っていたので「そうそう、そうだよね~」と盛り上がった次第。元試験官が、かつて口述試験でこんな質問をしたんだそうです。

着陸しようとしてギア(脚)を下ろしたらダウンロック・インディケータ(脚が確実に下りていることを示す表示器)が点灯しなかった。貴方はどうしますか?

Gulfstream IVでの表示例
このトラブルは、多くのパイロットが経験する。私が実際に遭遇したGulfstream IVでの表示例。赤丸で囲った左ギアのインディケータが点灯していない)

この質問のミソは「貴方はどうしますか?」の部分にある。イメージ(想像)して欲しい。天候の状況(進入方式)などによっても回答は変わるけれど、通常のVFR(有視界飛行方式)でTRAFFIC PATTERN(場周経路)からの着陸なら、当然DOWNWINDでギアを下ろす。で、ダウンロックが確認できなかったとしたら…

胴体着陸になるかもしれない、下りていない(かも知れない)ギアにもよるが、接地後にギアが畳まれて滑走路から飛び出すかもしれない。この場合、最悪のケースだと、燃料が漏れて発火・炎上するかもしれない。

と、ここまではイメージできると思う。そして試験官の質問に回答することになるのだが、貴方だったらどう答えますか? 私だったら(模範解答だという訳ではないので、そのつもりで)

まず一度だけギアレバー(脚下げ装置)をリサイクル(一度上げて再度下ろす)し、それでも点灯しなければ、その旨を管制官に伝え、滑走路上をローパス(管制塔の高さまで降下して水平飛行する)し、管制塔から目視でギアが出ているかどうか観てもらいます。その後、DOWNWINDまたは指示された場所でのホールド(待機旋回)を要求し、チェックリストを確認し、余裕があれば地上の整備士とも会社無線で状況を共有し、表示系統の問題なのか、本当にギアが下りていないのかを検討します。システム的にギアが下りていることを確信できれば、着陸を決断します。この場合でも、同乗者がいれば、十分なブリーフィング(状況の説明、今後の行動の伝達・共有)で不安を取り除くと共に、万が一の場合についても説明し、荷物の固定、シートベルトの確認など安全対策を徹底します。ギアが下りていることを確信できなければ(下りていない可能性があると判断すれば)ホールドを継続して燃料を減らし、消防車や救急車の手配などを管制官に要求し、着陸します。

というところでしょうか(本番では、もう少し詳しく説明しますが、簡潔・明瞭に要点を押さえた回答をすることも口述試験対策としては重要です:ダラダラ説明しないこと)。そして、当然のことながら、試験官は次の質問を投げかけてきます。

ギアが実際に下りているか否かを、どうやって調べるのですか?

ここで、答えに詰まる訓練生が多いのだという。誘導質問は、口述試験において避けなければいけないのだけど、質問を次のように変えると答えられるのだとか。

ギアが下りていない状態で、フル・フラップ(高揚力装置を最終着陸形態にまで下ろす)にしたら? あるいはパワーレバー(エンジン出力の調整レバー)をアイドル近くまで引いたら?

ギア・ワーニング(脚が下りていないことを警告する音)が鳴るように(システム的に)設計されていることは知っている。何をすれば、どうなるか、は知っている。何をすれば、を質問すれば、答えられる。でも、何をすればいいか? を質問すると答えられない。

これは、筆記試験のように「簡潔な設問」があり「正解」を選ぶ(答える)場合なら、有効な知識の整理の方法ではある。ただし、そこで止まっていては生きた知識とはいえない。その知識は何のためにあるのか? どう使うのか? そこまで理解していなければ意味がない。

自分の頭で考えよ

プロ・パイロットになるための勉強は、それなりに大変です。覚えておくべき数字もいっぱいある。航空機のシステムも完全に理解していなければならない。飛行機を操縦する手順も正確に実施できなければならない…

膨大なマニュアルや教科書、参考書を読み、机の上で覚えた知識を実際のフライトで用いながら、時に失敗して落ち込み、時に教官に叱咤されながら多くを学び、自らのスキル(技𠈓)として定着させなければならない。

そのためには、常日頃から、現実のフライトを頭の中で想像し、そこで起こり得るいろいろな状況(トラブル含む)をどう解決すればいいのかを想像し、そして「何をすればいいのか」を、どう「飛べばいいのか」を、繰り返し、繰り返し、自分自身に問いかけ続けなければならないのです(イメージ・フライト)。

最近の若い訓練生には、そのトレーニングが足りない。自分の頭で考えようとしない。教科書に書かれていることの表面だけをなぞり、問題集の問題と解答を丸暗記し、そのような安易な方法で満足している。だから、筆記試験のような質問には答えられても応用が利かない。実際のフライトで役に立たない。

訓練生のみなさんは、仲間同士で「こんな時はどうしよう?」とか「僕だったらこうするけど、貴方だったらどうする?」などと議論し、そこから更なる疑問を導き出し、自ら「設問と回答」を作るトレーニングをやっていますか? 実機訓練も、ただその場を上手に乗り切るのに精一杯なだけで、そこで発見できる多くの疑問を生きた知識へと昇華させていますか?

自分の頭で考えること! 想像力を高めること!

そして、イメージしたフライトを仲間と議論し、より深い理解へと繋げること!

同期の仲間や先輩、後輩、そして教官がそこに居ることのありがたみは、ただ群れているだけでは分かりません。疑問をぶつけ合い、多くの視点で物事を捉え、議論して初めて分かる。

自分の勉強方法を見直して下さい。期待しています。

民間航空操縦士訓練学校についてのご質問・ご相談・お問い合わせは、メールやお電話でお受けしております。こちらよりお気軽にお問い合わせください。


民間航空操縦士訓練学校

関連記事