整備
2018/03/12

火山灰の航空機への影響

整備本部
JGAS AVIATION BLOG

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
整備本部です。

現在、整備本部は帯広・東京・鹿児島の3拠点で絶賛活動中です。

そんな3拠点のうち、整備本部の主要拠点の1つである鹿児島航空機整備センターは、先週とある自然の脅威を目の当たりにしました。

そう、新燃岳の噴火です。

桜島もあることから、鹿児島は火山と共生している地域でもあります。朝晩のニュースの天気予報では「桜島上空の風向き」も必ず発表されるほど。今回の噴火では、3月6日は風向きの関係で降灰が鹿児島空港でも発生したことから、多くの航空便が欠航になりました。

台風でもないのに航空便が欠航するのは何故でしょう!?

火山灰が航空機へ与える影響を見てみましょう。


まず、火山灰とは火山岩が粉々になった細かい粒子(直径2ミリ以下のもの)のことだそうです。

火山灰が航空機に与える影響が大きいことが判明したのは、実は最近のことです。

この航空業界で有名なインシデントは、1982年にインドネシアで発生した前代未聞とも言えるジャンボ機の全エンジン停止ではないでしょうか。飛行中に火山の噴煙の中に突入してしまったジャンボ機が、突入後数分の間に4つある全てのエンジンが停止してしまったのです。不幸中の幸いで当該機は噴煙が漂う領域から脱出し、エンジンの再始動に成功し無事に地上に着陸しました。 

なぜ、エンジンは停止してしまったのでしょうか。

ジェットエンジン(タービンエンジン)は、空気を圧縮するコンプレッサー→圧縮空気を燃焼させる燃焼室→高温高圧の燃焼ガスから回転力を得るタービンと大きく3つで構成されています。

ジェット・エンジンの動作原理
参考:Wikipedia「ジェットエンジン」

そして火山灰にはガラスの原料となるケイ素を主成分とする物質が含まれています。燃焼室の温度は2000℃前後ですが、この燃焼室で火山灰のガラス成分が溶融するのです。その物質はタービンエリアにおける断熱膨張で温度が低下し、タービンブレードやノズルガイドベーンといった部品に付着し、その翼型を変化させてしまいます。

精密に計算された翼型が変化したことで、燃焼ガスから十分な回転力を得られなくなり、同軸で結ばれたコンプレッサーの圧縮能力も低下します。その連鎖で燃焼サイクルが乱れてエンジンが停止するのです。

エンジンが停止した事でエンジン内部の温度が急速に低下し、タービンに付着したガラス成分は固まりヒビが入って、流入する空気流や空転するエンジンの遠心力によりガラス成分が吹き飛ばされ、エンジンは元の状態を取り戻した事で再始動に成功したのでしょう。

他にもピトー管に侵入した火山灰が計器指示を異常にさせたり、与圧等のエアコンシステムのフィルターは灰だらけ・・・

こんな事になっては困るので、飛行機は欠航してしまうのです。

そして、火山灰エリアを飛行した可能性がある場合は、Volcanic Ash Inspectionという特別検査をもれなく実施することとなります。ちなみに、このVolcanic Ash Inspectionですが実はピストンエンジンにも存在します。

参考までにContinentalエンジンのSERVICE INFORMATION DIRECTIVEを添付します。

SID10-4
SID10-4(PDFファイル)

このブログをご覧の小型機のパイロットのみなさま、火山灰の影響を受けるエリアを飛行した可能性がある場合は、スグに最寄りの整備会社へご相談をお願いします!

もっとも、噴煙からは十分過ぎるほど距離をとって飛行しましょう。

長くなりました。それでは、今回はこの辺で。

関連記事